ガン抗原としてのLewis構造
Lewis抗原は、癌細胞が血管内皮 (vascular endothelium)へ接着する際に機能します(血行性移転)
Lewis関連の3糖または4糖 (ルイス抗原)は、炎症反応におけるリンパ球のホーミング中に白血球の接着に重要な役割を果たします。
Lewis構造
- ルイス抗原 type-1 (Lewis)
- Lewisa (Lea)
- sialyl-Lewisa (SLea) : ガン抗原CA 19-9と共に腫瘍マーカーとして一般的に使用
- Lewisb (Leb)
- ルイス抗原 type-2 (Lewisb)
- Lewisx (Lex)
- sialyl-Lewisx (Slex)
- Lewisy (Ley) : ヒトの消化管粘膜のO型結合グリカンと類似
ADCCの増強
- 抗体のFc領域 – FcγRIIIa の結合をトリガーとする
- FcγIIIaを持つ免疫細胞は、NK細胞
- 標的細胞を殺すサイトカイン/細胞溶解剤の放出
- ADCC活性は、FcのN-グリカンの影響を受ける
- CHO細胞由来のIgGでは、そのN-グリカンのコア位置に付加されたフコース残基は、異種の2分岐複合型であり、N-グリカンには、シアル酸は殆ど含まれない
- G0 galactose residue
- G1 galactose residue
- G2 galactose residue
- CHO Lec13細胞由来IgG1抗体と野生型CHO細胞由来との比較研究では(Shields er al.)、
- CHO Lec13細胞は、GMD遺伝子変異があり、非フコシル化N型糖鎖の含有率が高い
- CHO Lec13細胞で作ったIgG1のFcγIIIaへの結合親和性は、50倍増強(NK細胞/PBMC)
- ガラクトースやバイセクティングGlcNacの存在ではなく、フコースの不存在がADCCを高める(Shinkawa er al.)
- 別の研究では、コアフコースの除去が最大のADCC活性をは達成すると示唆した (コアフコースの除去と、S229D / D298A / I1332Eのミューテーションでは、ADCC活性の増強の差は無かった)
- FcγRIIIのアミノ酸変異 (Asn162Gly)とIgGとの結合研究によるADCC活性の増強の比較
- IgG-フコースフリーとFcγRIIIa-Asn162 >> IgGネイティブグリカンとFcγRIIIa-Gln162 > IgGネイティブグリカンとFcγRIIIa-Asn162
- IgG-フコースフリーとFcγRIIIa-Asn162 >> IgGネイティブグリカンとFcγRIIIa-Gln162 > IgGネイティブグリカンとFcγRIIIa-Asn162
- Fcのガラクトシル化とシアリル化によるADCC増強は、コアフコース除去と比較して限定的だが、Alanineスキャンにより増強効果が確認された。
- Fcエンジニアリング(IgG1)
- FcγRIIIaとの相互作用最大1倍の増強(増強しない)(T256A、K290A、S298A、E333A、K334A)
- FcγRIIIaとの相互作用最大169倍 (S239D or I332E、S239D and I332E、S239D and I332E and A330L
- 「活性化FcγRIIIa」と「阻害性RcγRIIb」との結合比を最大9倍 (S239D and I332E and A330L): Xencorによるヒト化の抗CD19抗体(XmAb5574: 広範囲のBリンパ腫および白血病の細胞株に対するADCC活性増強、患者由来急性リンパ牙球性白血病とマントル細胞リンパ腫細胞のタイルADCC活性増強)
afucosilated 抗体の生産戦略
GDP-fucoseの生合成酵素
CHO Lec13細胞は、内因性(endogenous)のGDP-mannose 4, 6 – dehydratase (GMD) 遺伝子を欠乏しています。GMDは、de novo GDP-2 fucose生合成3経路 (biosynthesis pathway)の最初のステップの触媒を担っています。
GMD遺伝子を欠乏しているにも関わらず、フラスコ培養で培養した結果、フコシル化抗体の比率は、50~70%になったという研究があります。
mRNAレベルでGMDが少なからず発現しており、別の発現パスウェイがあると考えられます。
GDP-keto-6-deoxymannose 3,5-epimerase/4 reductive (FX) – ノックアウト CHO細胞を用いて、完全にフコシル化を抑えたという研究もあります。
FUT8
Fut8遺伝子の発現レベルが低いYB2/0細胞を使用した研究 (CHO細胞との比較, Arakawa er al.)
- humamized anti-human interleukin-5 receptor (IL-5) IgG1 antibody (KM8399) in YB2/0 cell
- core fucose of KM8399 was lower level
- 産生したIgG1は、いずれの細胞でも同様の抗原結合性を示した
- YB2/0細胞由来では、コアフコースのレベルが低くく、ADCC活性は、約50倍であった
- YB2/0細胞のFUT8 mRNAレベルは、有意に低くかった
FUT8遺伝子の不活化(Yamane er al.)
- 抗CD20抗体産生CHO細胞 DG44細胞株
- FUT8対立遺伝子ともにゲノム領域からのノックアウト(FUT8 -/-)
- 同様の培養増殖曲線と、同様の生産性
- 完全な非フコシル化抗体の産生
- 親株との比較で2倍のADCC増強
siRNAを使用したCHO DG44細胞の培養
- 60%の非フコシル化抗体の産生
CHO細胞のGDP-fucose transporter (GFT)を除去
- ゴルジ体のGDP-fucose transporter (GFT)遺伝子(Slc35c1)のノックアウトによるゴルジ体でのフコシル化反応を止める
- zinc-finger mucleases (ZFNs)、transcription activator-like effector nucleases (TALENs)及びCRISPR-Cas9、などの技術を用いた
- fluorescence-activated cell sorting (FACS)で分別 (Aleutian aurantia lectin (AAL) )
- 得られた細胞は、CHO-gmt3 (CHO-glycosylation mutant3)
- EPO-Fc融合タンパク質とIgG1抗体において、core fucoseは、完全に欠落していた
- この手法により、無血清培地、細胞増殖率、生存細胞密度についての安定株を2ヶ月で樹立することが可能
- CHO-K1細胞は、そのtranscriptome dataから、Golgi fucosyltransferaseの内、FUT8のみを発現していることが示されています
- Fut8よりもSut35c1をノックアウトする方(Stc35c1 -/-)が利点があると筆者は述べています。
- CHO細胞に適用した結果、培養増殖率、生存率、抗体産生などが同等であった

