バイオ医薬品とは
バイオ医薬品は、英語でバイオロジクスと言います。バイオロジクスには、ヒトの体内に存在するタンパク性物質をターゲット(狭義)にしているため、よく知られている「抗体」以外のタンパク質も含まれます。
バイオロジクスは、当初、血漿分画製剤で知られているように血液から得られていましたが、技術革新により現在では、その目的物である医薬品は遺伝子組換えCHO細胞により得られるようになって久しく、正にバイオロジクスは、CHO細胞に関する技術革新とともに進展してきたと言えます。
以下、バイオロジクスについて、CHO細胞を使うアドバンテージをまとめました。ただし、CHO細胞が完全勝利ではありません。目的によっては、インスリン製剤など低分子量のタンパク質では、大腸菌が使用されています。
- 現在、バイオロジクスの代表は、「抗体」である
- その原材料は、
- 「血液、19世紀末・戦後 ~」、ジフテリアや破傷風などの感染症治療法として弱毒化毒素のウマへの投与によるマウ血清が感染症治療に高い効果があることがベーリング(behring)と北里柴三郎らにより明らかにされた
- 「B細胞のハイブリドーマ細胞化 (抗体に限る)、1975年~」、B細胞は、細胞ごとに単一の抗体を産生するが不死化させるためにミエローマ細胞を用いたハイブリドーマ技術が発展した。得られた抗体をmonolconal antibodyという。
- 「遺伝子組換え細胞」へと展開してきた
- source: Pharmacokinetics of Monoclonal Antibodies
- source : 抗体医薬とは, 熊谷泉 – 化学と教育 68巻 7号 (2020)
- 原材料として
- 「血液」
- 動物由来の場合では異種高原であることによる免疫原性の問題
- オリジナル機能のタンパク質を取得できる(血漿分画製剤)
- 量的制限
- ウイルス安全性に問題
- 「ハイブリドーマ」細胞
- 動物への抗原免疫(抗体作成)、脾臓(B細胞)とホスト細胞(ミエローマ)とのハイブリドーマ作製、など煩雑であり抗体に限定
- 動物への抗原免疫(抗体作成)、脾臓(B細胞)とホスト細胞(ミエローマ)とのハイブリドーマ作製、など煩雑であり抗体に限定
- 「遺伝子組換え技術」
- キメラ化 : 動物由来の可変領域とヒト抗体の定常領域を結合
- ヒト化抗体 : 動物由来のCDR (Complementarity Determining Region, VHとVLにそれぞれ3箇所ずつ存在)のみをヒト抗体に移植することで、約95%がヒト由来構造を維持
- 製造技術の進展による大量製造
- 実績としてのウイルス安全性(CHO細胞)
- 宿主細胞に関わる糖鎖(CHO細胞は実績として克服)
- 現在では様々な課題を克服できている
- 「血液」
- 遺伝子組換え技術での生産細胞
- 分子量が大きな抗体の産生細胞として、殆ど全てがCHO細胞が選択される
- 分子量が小さいインスリンやインターフェロンなどの産生細胞には微生物(大腸菌、酵母など)が使われる。
- CHO細胞
- バイオロジクス市販品で30年の実績
- ヒト型に近い糖鎖を付加でき、その他不純物に関する安全性の蓄積
- 立体構造を再現できる
- 高い培養生産性技術が蓄積(最大10g/L)
- 大腸菌
- 医薬品上の問題点
- 糖鎖を付加できないため糖タンパク質には不向き
- 高い産生量にするとInclusion body(不溶性)になる
- 立体構造をオリジナルに再現できない
- 対策
- 糖鎖問題は、目的タンパク質を限定
- 立体構造は、Refolding技術による正常化
- 医薬品上の問題点
- 酵母
- 1990年代に盛んな研究
- 医薬品上の問題点
- 糖鎖を付加できるが、ヒト型ではないため、抗原性の問題がある。
- 強力な蛋白分解酵素により目的タンパク質の分解問題
- 対策
- 糖鎖問題
- 目的タンパク質を限定する
- 糖鎖付加が無いタンパク質
- 糖鎖遺伝子のノックアウト
- 医薬品でない酵素など
- 分解問題
- 培養技術及ひ精製技術で対応
- プロテアーゼ遺伝子のノックアウト
- 糖鎖問題
CHO細胞・エニジニアリング
現在のバイオロジクス、特に抗体に関する遺伝子組み換え技術を使ったCHO細胞による生産性改善と取り組みは、以下の参考文献が概説として参考になります。
- 目的タンパク質の遺伝子組込み、得られる細胞の多様性(糖鎖修飾)
- 細胞株構築期間の長さ
- 得られた細胞株の培養最適化
- 比生産速度 pAB と 生細胞濃度 Xvの積分 = 生産濃度 P (IVC) (完全に理解できていません。今後要検証)
バイオ医薬品生産におけるプロダクションサイエンス (2013)
https://www.sbj.or.jp/wp-content/uploads/file/sbj/9109/9109_tokushu_3.pdf
生産細胞の培養技術
産生株が高い生産能力があったとしても、その培養条件がマッチしていなければ高い生産性は達成できません。抗体医薬品の場合、投与される量が多いため培養生産性は課題の一つになります。
安定産生株の樹立と、その培養条件の開発の概説として、以下の文献が参考になります。
- 安定発現株
- 培養スケールアップ
- 培養プラットフォーム
- 電荷的多様性の制御
- 培養終了の判断
抗体医薬品生産培養技術の課題と展望 (2013)
https://www.sbj.or.jp/wp-content/uploads/file/sbj/9109/9109_tokushu_4.pdf
抗体医薬品・Fc融合タンパク質
抗体医薬品について学ぶには、以下の項目を押さえておくことが重要です。「国立医薬品食品衛生研究所」のサイトに、「抗体」医薬品と「Fc融合タンパク質」について、まとめられたサイトがあります。
抗体医薬品について全体像を把握することができます。
抗体医薬品・Fc融合タンパク質
国立医薬品所品衛生研究所・生物薬品部
http://www.nihs.go.jp/dbcb/mabs.html
抗体の分子的特徴として「Fc」と呼ばれる領域があります.Fcには抗原に対する結合機能は無く別の機能を持っていますが,抗原結合能を持っていないことから,この領域に,例えばPEGなどを結合させて,抗体自体の血中半減期を延ばしたり,がん抑制化学物質を結合させて,がん治療薬として機能を増強させたりと,このFc領域は利用されます.

